Q;遺言とはどのような制度ですか?【遺言】
A;遺言は、人の最終意思として自己の財産の処分方法を明らかにするものですが、人が死亡してから効力を生じるものであることから、普通の契約のように意思表示をした人(遺言者)の真意を確認することができません。
そこで、民法は、遺言者の真意を確保し、遺言書の偽造・変造を防止するために厳格な要件を定め、この要件を欠く場合には無効なるという扱いをしています。
Q;遺言にはどのような種類がありますか?【遺言】
A;「普通方式」の遺言として、「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」があります。また、人の死期が迫っているような場合や一般社会から隔離されているといった場合に「特別方式」の遺言認められています。
Q;「自筆証書遺言」とはどのようなものですか?【自筆証書遺言】
A;自筆証書遺言は、一枚もしくは一綴りの紙面の中に、遺言の内容、日付を自書し、署名・捺印して作り上げる遺言です。遺言書を入れた封筒に日付や署名・捺印がされている場合は、原則として無効になります。代筆やワープロで作成した文書は、遺言者本人が作成したか否かの判定が困難となるため、自筆証書遺言としては無効です。したがって、字の書けない人は自筆証書遺言を作ることができません。
Q;「自筆証書遺言」のメリットとデメリットを教えてください。【自筆証書遺言】
A;自筆証書遺言は、作成のすべてを自分で行うため、遺言の内容や存在を秘密にすることができますし、証人の立会いを必要としません。また、費用もかかりません。
しかし、他方で、要件を具備しないために無効になってしまうおそれがあること、偽造・変造・隠匿をされてしまう可能性があること、遺言書の存在自体が相続人に知られずに、遺言の内容が実現しないおそれがあることなどのデメリットもあります。
Q;「公正証書遺言」とはどのようなものですか?【公正証書遺言】
A;公正証書遺言は、遺言者が、証人2名の立会いのもと、遺言の趣旨を公証人に口頭で告げ、公証人がその内容を筆記して遺言者及び証人に読み聞かせます。遺言者及び証人は、その内容が正確であれば署名・捺印して作成します。
Q;「公正証書遺言」のメリットとデメリットを教えてください。【公正証書遺言】
A;公証人という、裁判官・検察官等の法律実務に携わってきた法律の専門家が作成に関与することから、方式の不備で遺言が無効になるおそれがほとんどありませんし、原本が公証人役場に保管されることから、遺言が偽造・変造・隠匿されたり、紛失するおそれもありません。
しかし、遺言の作成に証人2名が立ち会うことから、その内容が事前に漏れてしまうおそれは否定できません。また、数千円から数万円程度(遺言の目的たる財産の価格によって変わります)の費用がかかることもデメリットの一つかもしれません。
Q;「秘密証書遺言」とはどのようなものですか?【秘密証書遺言】
A;秘密証書遺言は、遺言者が遺言の内容を記載した書面(ただし、自筆証書遺言と異なり、自書したもののほか、他人に書いてもらったものやワープロ等で作成したものでもかまいません。)に署名・捺印をした上その書面を封筒に入れ、遺言書に捺印した印と同じ印で封印し、公証人及び証人2人の前にその封書を提出し、自己の遺言書である旨とその書面を作成した者の氏名、住所を申述し、公証人が、その封紙に日付及び遺言者が述べた事柄を記載した後、遺言者及び証人2人と共にその封紙に署名・捺印することにより作成されます。
「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」をミックスしたような方式の遺言です。
Q;「秘密証書遺言」のメリットとデメリットを教えてください。【秘密証書遺言】
A;上記のような手続を経て作成されることから、その遺言書が間違いなく遺言者本人のものであることを明確にでき、かつ、遺言の内容を誰にも明らかにせず秘密にすることができます。
しかし、公証人は、その遺言書の内容を確認することはできませんので、遺言書の内容に法律的な不備があるなどの理由で無効となってしまうおそれは否定できません。また、秘密証書遺言は、その作成した事実だけが公証人役場に記録されますが、内容までは記録・保管されませんので、紛失、隠匿の可能性は残ってしまいます。
Q;「特別方式の遺言」とはどのようなものですか?【特別方式の遺言】
A;普通方式(自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言)での遺言ができない場合に認められる遺言です。普通方式で定められている厳格な要件を外す代わりに、それぞれの状態に応じて多人数の証人を求めたり、家庭裁判所の確認を必要としたりして、普通方式とは異なる要件が付加された遺言です。具体的には、「死亡の危急に迫った者の遺言」「伝染病隔離者の遺言」「在船者の遺言」「船舶遭難者の遺言」があります(民法976条~979条)。
Q;「検認」とはどのようなものですか?【検認】
A;検認は、家庭裁判所において「遺言書」の存在を確認し、その外形を保全して、以後の偽造・変造を防止するものです。遺言者が死亡したとき、遺言者から遺言書を預っている人(保管者)と遺言書を発見した相続人は、その遺言書を家庭裁判所に提出して「検認の手続」をしなければなりません。
封がしてある遺言書を勝手に開封してしまうと、過料の制裁を受けることがありますし、偽造・変造したのとのあらぬ疑いをかけられないとも限りませんので、遺言書とおぼしきものは、必ずそのまま検認の手続きをすべきでしょう。
なお、検認の手続きでは、遺言書の有効・無効は確定されません。
弁護士吉村実(弁護士法人ポート法律事務所)