相談者・依頼者にとって、弁護士を探すということと、法律事務所を探すということは、ある意味同じであるともいえます。
法律事務所によっては、必ずしも、担当の弁護士を指名することはできないでしょうし、法律相談の申し込み自体が、個々の弁護士に対するものではなく、法律事務所に対して行うという場合も多いと思われるからです。
ちょうど、複数の医師の所属している病院で診察してもらうときに、病院は選べても、担当医師を選べない場合があるのと同じかもしれません。
そこで、このページでは、法律事務所の探し方(見つけ方・選び方)を検討してみたいと思います。
まず、法律事務所選びで最も気をつけておきたいことは、「所属弁護士の人数」ではないかと、私は考えております。
この点については異論もあるかもしれませんが、やはり、一人の弁護士で運営している法律事務所と、複数の弁護士で運営している法律事務所とでは、その有する情報量に差が生じることは否定できません。
複数の弁護士が所属している法律事務所の方が、より多くの“アンテナ”を有しているといえますから、日々発信されている膨大な量の法律情報や裁判に関する情報等を蓄積しやすいことは、容易にお分かりいただけると思います。
弁護士といっても人間ですから、一人の弁護士が調査できる文献や裁判例の数、あるいは、経験できる事件の量には、自ずから限界があるわけです。
言い方を換えれば、複数の弁護士が所属している法律事務所であれば、一人の弁護士の限界を互いに補い合うことで、より良質なリーガルサービスを提供できると考えられます。
また、法的な問題というのは、一つの問いに対して複数の考え方や回答が生じる可能性があります。
法律をテーマとしたテレビ番組等でご覧になっているかと思いますが、同じ出来事を前提としているのに、複数の弁護士の見解が異なった結論にたどり着くという、あの現象です。
このような現象は、現実の法律問題を解決する場面においても起こり得うるわけですが、その際、複数の弁護士が所属している法律事務所であれば、一つの問題に対して、様々な角度からの検討をすることが可能となりますので、偏った問題の見方や問題点の見落としなどといったことが起こりにくくなるといえます。
もっといいますと、本来は、一つの回答しかない法律問題であっても、担当弁護士の勘違いや知識不足によって、誤った解決方法に導かれてしまう可能性があることは、一般論として、否定できません。
これに対し、複数の弁護士が所属している法律事務所であれば、問題に対する誤った考え方を検証し、是正する機会があるといえますから、適切な結論に導かれる可能性が高くなるといえるでしょう。
もちろん、例えば、平均的な弁護士に比べ何倍も能力のある弁護士が一人で運営している法律事務所と、(まだまだ力不足の)新人の弁護士を複数採用することで、外見的な弁護士数だけを多くみせかけている法律事務所とでは、どちらが優れているのか、などと言い出すと問題は残ります。
しかし、一般論としては、やはり、複数の弁護士が所属している法律事務所の方が、上記のようなメリットがあると思いますので、法律事務所を選ぶ際の一つの基準にはなると思います。
弁護士 吉村 実 (弁護士法人ポート法律事務所)